それダメ!なキャリコン 3タイプ

キャリアコンサルタントをしている《だいさん》ですが、それダメ!なキャリアコンサルタントを大きく3タイプに分類してみました。キャリアコンサルタントの地位向上や、キャリアコンサルティング普及と一般化のために。キャリアコンサルタント自身も改めて認識しておかなければならないですし、もちろんキャリアコンサルタントを必要とされている人も知っておいて欲しいことです。

役割の違い

人々の悩みや不安に対応することをお仕事にしている、あるいは対応する役割として以下のような言葉をお聞きになられたことは1度はあるのではないでしょうか?どの役割も一見すると似たような人への携わり方に思われがちです。また相談される方も悩みや不安を解決したい!という想いでおられるというのが共通していることなので、それぞれの役割がシームレスな状態になっていることもあります。しかし本質としては役割が異なるので、少し体系的に違いをまとめておきます。

役割名称対応の特徴結果や成果
ティーチングティーチャー問題解決方法となる知識を教える相談者が正しい問題解決方法を理解する
コーチングコーチ問題解決をしようとする意識を引き出す問題を解決しよう!と相談者が自ら行動を起こす
カウンセリングカウンセラー問題や悩みを専門知識と技術で聞き援助する相談者が問題の本質を理解する
コンサルティングコンサルタント問題解決方法を手取り足取りアドバイスするアドバイスにより相談者が問題を解決に至る
役割と対応および成果
だいさん

いかがでしょう?役割と対応方法、対応から導き出される結果や成果に関して、似てはいるけれど違いがあることは感じてもらえたのではないでしょうか?

少し具体例を用いて補足をしておきます。

例えば『就職活動』に関して、それぞれの役割に相談したと仮定します。大きな流れとしては次のようになります。

ティーチャーへ相談した場合

就職活動とはどういうことを意味するのか、就職活動には何が必要なのかを知識として指導。相談者は教わった知識から自身で必要なことを選び取る必要があります。結果として就職できるかは問われない。

コーチへ相談した場合

就職活動をすることでどのような効果があるか考えさせたり、就職活動する上での勇気を与えたりしながら、本人に就職活動に必要なことが何かを考えさせ、就職活動への意欲や意識を自ら高めさせていきます。結果として就職できるかは問われません。

カウンセラーへ相談 

就職活動に対する不安や悩み、そもそも就職活動をどのように考えているか、感じているかの聞取りが中心。相談者自身が言葉や態度として就職活動をどのように捉えているかをカウンセラーは専門知識と技術を用いてつかみ取り、それをもとに助言を行う。結果として就職できるかは問われない。

コンサルタントへ相談 

就職活動に必要な事柄全てを包括し、具体的に何をどうすれば就職できるかアドバイス。場合によっては履歴書の書き方・面接対策など具体的な手段に関してもアドバイスを行う。コンサルタントのアドバイスによって就職できることが成果となります。

キャリアコンサルタントとは

だいさん

では、私のようなキャリアコンサルタントという役割はどういう存在なのでしょうか。名称とすると《コンサルタント》になるのですが・・・

『キャリアコンサルタント』や『キャリアカウンセラー』という響きがあるように、2つの役割の要素が混在しているという面もあります。あるいは国家資格の取得として学んでいく過程の中では『コーチング』の側面も含まれています。加えて国家資格を取得後の働き方としては、《だいさん》のようにティーチングの場である学校で勤務するということが具体的な形態でもあります。

全ての良いとこ取りをしているだけなの?と思われるのではないでしょうか。確かにそのように思われることも否めません。

しかし、キャリアコンサルタントには倫理綱領として、しっかりと定められているいることがあります。

キャリアコンサルタント 倫理綱領

前文
キャリアコンサルタントは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことを職務とする。キャリアコンサルタントの使命は、相談者のキャリア形成上の問題・課題の解決とキャリアの発達を支援し、もって組織および社会の発展に寄与することである。その使命を果たすための基本的な事項を「キャリアコンサルタント倫理綱領」として定める。
全てのキャリアコンサルタントは、本倫理綱領を遵守するとともに、誠実な態度と責任感をもって、その使命の遂行のために職務に励むものとする。
第 1 章 基本的姿勢・態度
(基本的理念)
第1条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、人間尊重を基本理念とし、個の尊厳を侵してはならない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングが、相談者の生涯にわたる充実したキャリア形成に影響を与えることを自覚して誠実に職務を遂行しなければならない。
(品位の保持)
第2条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントとしての品位と誇りを保持し、法律や公序良俗に反する行為をしてはならない。(信頼の保持・醸成)
第3条 キャリアコンサルタントは、常に公正な態度をもって職務を行い、専門家としての信頼を保持しなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、相談者を国籍・性別・年齢・宗教・信条・心身の障害・社会的身分等により差別してはならない。
3 キャリアコンサルタントは、相談者の利益をあくまでも第一義とし、研究目的や興味を優先してキャリアコンサルティングを行ってはならない。

(自己研鑚)
第4条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングに関する知識・技能を深める、上位者からの指導を受けるなど、常に資質向上に向けて絶えざる自己研鑚に努めなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、組織を取り巻く社会、経済、環境の動向や、教育、生活の場にも常に関心をはらい、専門家としての専門性の維持向上に努めなければならない。
3 キャリアコンサルタントは、より質の高いキャリアコンサルティングの実現に向け、他の専門家とのネットワークの構築に努めなければならない。
(守秘義務)
第5条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを通じて、職務上知り得た事実、資料、情報について守秘義務を負う。但し、身体・生命の危険が察知される場合、又は法律に定めのある場合等は、この限りではない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングの事例や研究の公表に際して、プライバシー保護に最大限留意し、相談者や関係者が特定されるなどの不利益が生じることがないように適切な措置をとらなければならない。(誇示、誹謗・中傷の禁止)
第6条 キャリアコンサルタントは、自己の身分や業績を過大に誇示したり、他のキャリアコンサルタントまたは関係する個人・団体を誹謗・中傷してはならない。

第 2 章 職務遂行上の行動規範
(説明責任)
第7条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを実施するにあたり、相談者に対してキャリアコンサルティングの目的、範囲、守秘義務、その他必要な事項について十分な説明を行い、相談者の理解を得た上で職務を遂行しなければならない。
(任務の範囲)
第8条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、自己の専門性の範囲を自覚し、専門性の範囲を超える業務の依頼を引き受けてはならない。
2 キャリアコンサルタントは、明らかに自己の能力を超える業務の依頼を引き受けてはならない。
3 キャリアコンサルタントは、必要に応じて他の分野・領域の専門家の協力を求めるなど、相談者の利益のために、最大の努力をしなければならない。
(相談者の自己決定権の尊重)
第9条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを実施するにあたり、相談者の自己決定権を尊重しなければならない。
(相談者との関係)
第 10 条 キャリアコンサルタントは、相談者との間に様々なハラスメントが起こらないように配慮しなければならない。また、キャリアコンサルタントは相談者との間において想定される問題や危険性について十分配慮してキャリアコンサルティングを行わなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者との多重関係を避けるよう努めなければならない。
(組織との関係)
第 11 条 組織との契約関係にあるキャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者に対する支援だけでは解決できない環境の問題や、相談者の利益を損なう問題等を発見した場合には、相談者の了解を得て、組織への問題の報告・指摘・改善提案等の環境
への働きかけに努めなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングの契約関係にある組織等と相談者との間に利益が相反するおそれがある場合には、事実関係を明らかにした上で、相談者の了解のもとに職務の遂行に努めなければならない。

だいさん

全てのキャリアコンサルタントはこの倫理綱領に従って活動していくことが求められています。

それダメ!① 私の言う事を信じなさい!パターン

倫理綱領の第1章基本的姿勢・態度にある、(基本的理念)にある 個の尊厳を侵してはならない ということが守られてないことを意味します。

キャリアコンサルタント自身もコンサルタントである前に人であり、価値観をもっていることは事実です。またキャリアコンサルティングをしていると、相談者の悩みや不安などに対して、回答をしてあげたいという気持ちになることも多いのが実情です。しかしそんな時この倫理綱領が頭に思い浮かんでいなければなりません。相談者自身の考え・価値観を第1として尊重し、相談者自らが自身を深く見つめなおす機会に繋げることが大切だということであり、自身の価値観を押し付けてはいないかという視点です。

キャリアコンサルタントに相談される際にも、この視点は持っておいて欲しいことです。貴方に対応しているキャリアコンサルタントが発する言葉が、断定的で、明確であればあるほど耳障りとしては良いかもしれません。そしてキャリアコンサルティングを終えた直後に感情として「なるほどなぁ…」もしくは「納得できた」という想いが強い場合は、このパターンであることが多いかもしれません。

このパターンは即効性は強いかもしれませんが、相談者にとって持続性がなく、消化不良を起こす可能性があるため本質的な問題解決に至りません。

それダメ!② なんでも解決してみせます!ご安心ください。パターン

倫理綱領の第2章職務遂行上の行動規範(任務の範囲)にある、自己の能力を超える業務の依頼を引き受けてはならない。を守れていません。

キャリアコンサルティングでは、相談者から『信用』していただくことにより円滑なコンサルテーションに繋がっていきます。信用はそのうち『信頼』に繋がり相談者からは、様々な事柄に関して打ち明けていただける関係性に繋がることもしばしばです。それ自体は決して悪いことではありません。それだけキャリアコンサルタントとして相談者とラポール形成ができているということです。しかしだからと言って自分の能力や力量を見誤ってはいけません。信頼に応えるということの本質を見誤り、知識も技術も経験値もない対応することが、かえって相談者を苦しめる結果になる可能性があることを知らなければならないのです。

キャリアコンサルタントに相談される際の注意ポイントは、貴方に対応しているキャリアコンサルタントが「どんなことでも解決しますよ!」とは決して言わないかと思います。しかしキャリアコンサルタント自身が『考えている』素振りが一切見られない時にはちょっと注意が必要かもしれません。悩むことなく、スラスラと回答してくれることによる安心感もありますが、赤の他人である貴方の悩みや不安を、貴方と同じように感じ取り向き合っていくにはそれ相応の時間を必要とすることは当然のことだと思いませんか?

このパターンは信用や信頼の認識間違いであり、本質的な問題解決から遠ざかってしまう可能性があります。

それダメ!③ こうすれば良いんですよ!パターン

倫理綱領の第2章職務遂行上の行動規範(相談者の自己決定権の尊重)を守れていません。

これはとても重要なことです。キャリアコンサルタントは答えを提供する役割ではありません。全ては相談者自身が自分の人生を自分で切り開いていく、獲得していくために、自己決定権を尊重することが大前提となっています。自分で決められないから相談しているんです…と相談者がおっしゃることもありますが、それはキャリアコンサルティングの開始間もない時期の発言が多いのが実状かと思います。つまり『決める』という行為を阻んでいる何かが存在しているから、『決められない』わけです。あるいはその阻んでいる何かもご自身で分かっておられて、その解決策も想像できている方もおられます。でもそこと向き合えない。だからキャリアコンサルタントはそっと寄り添うことが大切なのだと思います。誰もが自分の人生は自分で獲得したいと考え生きているわけですから。

キャリアコンサルタントに相談される際の注意ポイントは、キャリアコンサルタントから拍子的に「こうすれば良いんですよ」という指示的なニュアンスで伝えられた時です。しかしこれはあまり神経質にならないで欲しいところでもあります。そこには悪意ではなく、なんとかしてあげたいという善意に近い気持ちのほうが強く含まれていることが多いので。ただし、命令口調に感じた際などは要注意です。

このパターンは待ちきれないが引き起こす問題です。互いに効率や時間を意識すると発生してしまいます。自分で決めるを互いに理解しておく必要があります。

自分にあったキャリコンの探し方

それダメ!とならないキャリアコンサルタントに出会うためにはどうすればよいのでしょうか。《だいさん》が思うところを記しておきます。

  • キャリアコンサルタントに何を求めているのかを、初めて接する際にしっかりと伝えておくこと。つまりティーチング・コーチング・カウンセリング・コンサルティングのどのタイプを望んでいるのかを知らせるということです。
  • 何か違うな…と感じたら、キャリアコンサルタントを変えることに柔軟であること
  • 人間同士なので、思う事や感じたことを伝えあう・確かめ合うことを怖がらずに行うこと
  • 自分の人生は自分だけのものという意識でキャリアコンサルタントと接すること
  • 互いに感謝の気持ちをもって接すること

最後に

キャリアコンサルタント倫理綱領の前文に次のように記されています。

助言及び指導を行うことを職務とする 

キャリアコンサルタントは、他人の悩みや不安に触れ、向き合う様々な職種の中で、最も幅広く対応する役割なのだと思います。

幅広いということは、広く浅くというイメージをもたれる方も多いかと思いますし、確かにその通りです。

しかし、広く浅い知識で知ったかぶりで対応されては相談者様の利益を損ねかねないことを理解し、自身の専門性を超える範囲に関しては、その専門家にしっかりと橋渡し(=リファーと言います)を行える存在としてキャリアコンサルタントを考えていただければ、その役割と存在価値はもう少し明確になるのではないでしょうか。

ご自身で専門家に相談できる方は、そのままで良いのです。

ご自身がティーチングなのか、コーチングなのか、カウンセリングなのか、コンサルティングなのか。何を求めているかはっきり掴めている方も、そのままご自身の求める先へご相談されるので良いのです。

でも何をどこに、誰に相談したら良いのかわからない。誰かに聞いて欲しい。そういう方がキャリアコンサルタントの扉をノックしていただく方だと思います。

《だいさん》はいつでもお待ちしています。

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