就活支援者やキャリアセンターの職員がよく言う『視野を広げて』とは何を意味しているのでしょうか?その言葉の本質を新卒就活支援に15年取組んできたキャリコンが解説します
よく就活対策本や、大学や各種教育機関で設置のキャリアセンター・キャリア担当の方々から『視野を広く持ちましょう』『視野を広げて!』という表現でのアドバイスを見たり、聞いたりします。『視野を広げて』とは何を意味しているのでしょうか?新卒就活支援に15年以上取組んできたキャリコン《だいさん》が、この『視野を広げて』という言葉の本質を、少し違った表現で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
ある女子学生からの相談
21歳の女子学生からの相談に対応しました。活発で社交的な女子学生です。相談内容は以下の通り。

彼女の相談時の様子
- 悩んでいると言う割に笑顔で挨拶
- 身だしなみもしっかりと整っている
- 自分の想いを話ながらも腕時計をチラチラ
- 親御さんの話題には少し消極的
- 本当にどうするべきかを求めているかは不明…
私が感じた限りは上記のような様子で、約1時間ほど、基本的には
彼女の話を聞き、彼女から発せられる話を聞くことに終始。
ある女子学生からの相談から感じたこと
彼女から伝えられる相談の中で、私の耳と印象に強く残ったものがあります。
『〇〇すべきでしょうか?』
キャリアコンサルティングをしていると、相談者の方からの相談の中でよく耳にすることがある響きだと思います。また大学や専門学校などの教育機関でキャリアコンサルタントとして活動・活躍したいと考えているキャリアコンサルタントの方は、この『〇〇すべきでしょうか?』という問いかけに関しては80%以上の確率で耳にすることになるかと思います。《だいさん》の15年以上教育機関で学生のキャリアコンサルタントに取組んできた肌実感です。
《だいさん》も教育機関に勤めたての頃、そして国家資格キャリアコンサルタントを取得するまでは、この『〇〇すべきでしょうか?』という問いかけや相談に対して、こう答えなければならない!こう答えることが《だいさん》に相談してきた学生が求めてくれていることなんだ!と考えていたことがあります。もしかすると、キャリアコンサルタントになりたてで、初めて学生の相談に応じる際には、頭の中でこのように答えなきゃ!と心の声が聞こえるかもしれません。。。
『〇〇すべきですよ』『〇〇のほうが良いですよ』
『〇〇すべきでしょうか?』の問いかけ・相談の裏には、どのような想いがあるかわかりますか?そうです誰もが想い願っていることです。
《失敗したくない》
この女子学生もこの一言に尽きるのだと思います。自分で考えてもわからない。周囲の人や友達に聞いてもわからない。だからキャリアコンサルタントや先生と呼ばれるような人なら、きっと私が《失敗しない》答えをくれるはず。そう信じて訪ねてきてくれています。でもどこか疑っている気持ちも見え隠れしながら。。。それが時間を気にしる仕草や、悩みと態度の釣り合わなさ・・・などに見受けられました。
『視野を広げて』は方法を知ってからしか出来ません!
彼女の相談に対してキャリアコンサルタントとしてどう対応していく必要性があるかを説明する前に、彼女の発言の中でもう一つ私が気に留めた事があります。
『コロナ禍なので』
2020年度の学生への就活支援・キャリアコンサルティングではこのキーワードは避けては通れないものでした。彼女も《だいさん》のところへ相談しにくる前に、担任の先生や親御さん・お友達との話で「コロナだから」という前提を常に耳にしていたようです。特に担任の先生に相談した際の印象深い一言があったようです。
『コロナだから、視野を広くもつように』
なるほどなぁ・・・と感じました。ついついこのような言い方・伝え方をしていると思いませんか?『視野を広く』は決して間違ってはいません。むしろ正しい考え方です。しかしこの言葉を使用するシーンを考えてみてください。逆境や困難などを前にした時・前にしている人に対して『視野を広く』という言葉を使っているように思います。
この『視野を広く』と示された側も、その言葉の意味合い・必要性は心のどこかで感じていることが多々あります。彼女もその一人です。だから『視野を広く』しようと試みるのですが、ここで大きな戸惑いが生じます。
どうやって視野を広げれば良いのだろう?
そうです。人間は経験した事・知った事でなければ考え・話すことができない生き物です。
見たことも・聞いたこともないことはできるはずがない生き物なのです。
経験と体験の違いはこちらを参照にしてください!!
https://yoki-yoki.fun/2020/09/01/experience/
視野を広げる=リンクを貼るということ
《だいさん》流となりますが『視野を広げる』という言葉は何を意味しているのか解釈を示しておきたいと思います。
インターネットの世界で使われおり、皆さんも日常で使用されている言葉が『視野を広げる』という言葉のイメージをよく表していると考えています。
リンク(link)とは、繋げる、繋がり、結びつける、結びつき、連結(する)、連係(させる)、接続(する)、結合(する)、関連(させる)、絆、輪、環などの意味を持つ英単語。網状の構造物(ネットワーク)において、構成要素(ノード)間を結びつける線や経路のことをリンクあるいはエッジ(edge)という。
IT用語辞典e-Worksより
上記に記したリンク(link)ですが、例えばHPなどで、『詳しくはこちら』などでクリックすると、詳細ページ(別サイト)へ移動するアレです。
どうしてこのリンク(link)を『視野を広げる』を意味するイメージとして捉えるのか
全ての人で経験・知識・技術は異なります。十人十色や千差万別という言葉が示す通り、全ての人に魅力と可能性は存在しています。
ですから、自分の中にある経験・知識・技術をどのような世界・仕事・職種とリンク(link)させるのか、させれるのかが大切だということです。リンク先が増えれば増えるほど、結びつける先を増やせれば増やすほど自分の価値は高まっていくということです。
なぜなら、自分の経験や知識を、社会でどのように活かすのか・活かそうと考えるのかが就職するという事であるはずだからです。
就職活動を例に出せば、貴方が見出したリンクが、正しいリンク付けかどうかは問われません。自分の考えと想いでリンク付けしていれば良いのです。
だって、そのリンク付けを受入れるかどうかは、その企業の面接官が見定めるわけですから。
キャリアコンサルタントが答えることができないこと
さて彼女に対して《だいさん》がキャリアコンサルタントとして伝えたことは何か。
『ごめんなさい』
『間違いのない正しい選択を示すことはできません。』
彼女はキョトンと一瞬しつつ、その後不服そうな表情で「じゃぁ無駄じゃん」と一言つぶやきました。
改めてゆっくり丁寧にこう《だいさん》は伝えました。
『正確に言えば、何が正しいかなんて誰にもわからないんだよ』
『自分で正しく悩むことが大切なんだよ』
そういうと、少し顔つきが変わったので、そのあともう少し彼女の考えていること・何に不安や悩みをもっているのかを質問しながらじっくり聞いていくことができました。最終的には、彼女の中で何か得心いくものがあったのだと思います。学校で見かける姿は笑顔でいるように思います。そして先日担任の先生から「内定先で頑張るそうです」とのご報告をいただきました。
キャリアコンサルタントは相談者に対して、答えを提供する存在ではありません。
相談者が求める答えは、実は相談者自身の中にすでに存在していることもあります。その場合はそのことに相談者自身が気づいていない、あるいは何かが邪魔して気づこうとしていない、気づいていても気づかないようにしていることがあります。そこをゆっくり丁寧にキャリアコンサルタントが道案内していくことが求められます。
あるいは、単に気づいていない場合は、自分の力で気づけるようにキャリアコンサルタントが補助輪になってあげることが求められるのです。
人から相談されれば、相談者が訪ねてきたことに解を返すことが全てだと思いがちになってしまいます。それも間違いではない部分もありますが、人から与えられた答えだけでは、人は真っすぐ歩けないのです。
《だいさん》はキャリアコンサルタントとして、このように考えます。
正しく悩み、正しく苦しむことで、人は自分らしく生きる道を自ら見つけていくのではないかと。
YouTubeでもこの話題を話しています。

